現役のiOSエンジニアとして、常々「何か新しいサービスを作れないか」と考えています。そんな中、ふとした思いつきをAIアシスタントのGeminiに壁打ちしてみることにしました。この記事では、単なる思いつきがGeminiとの対話を通じて、市場を分析し、具体的なビジネスモデルへと昇華していく、その思考プロセスと全記録をお届けします。

第1章:アイデアの着想と最初の壁

全ての始まりは、非常にシンプルなアイデアでした。

僕: 「『あなたの名前をアプリにしませんか?』みたいにユーザーを募集して、その人専用のアプリを作ったら面白くないかな?愛着も湧くだろうし。」

パーソナライズされた体験は魅力的です。しかし、Geminiの最初の応答は、僕の楽観的なアイデアを現実へと引き戻すものでした。

Gemini: 「そのアイデアは面白いですが、残念ながらApp Storeの審査ガイドライン、特にスパムに関する規定(4.3)に抵触する可能性が非常に高いです。」

なるほど。ベース機能が同じで、名前やデザインだけを変えたアプリを大量にリリースする行為は「スパム」と見なされる。確かにその通りです。たった一つの指摘で、このアイデアの実現が極めて困難であることがわかりました。

夢は一瞬で破れましたが、これが全ての始まりでした。

第2章:ピボット!「アプリ開発のサブスクリプション」という新大陸

最初のアイデアが頓挫した僕に、Geminiは別の視点を提示しました。ヒントになったのは、最近話題のデザイン業界のビジネスモデルです。

僕: 「デザインを月額固定で提供するサブスクサービスがあるらしいんだけど、これをアプリ開発に応用できないかな?」

Gemini: 「はい、『App as a Service (AaaS)』として十分に可能です。それは非常に先進的で可能性のあるビジネスモデルです。」

ここから、一気に視界が開けました。単発の受託開発ではなく、月額制でアプリの開発・運用・保守を継続的に提供するサービス。クライアントにとっては高額な初期投資を抑えられ、僕にとっては安定した継続収入が見込めます。

まさに、僕がやりたかった「プロダクト化されたサービス」の形でした。

第3章:巨人とどう戦う?市場分析とニッチ戦略

「App as a Service」というモデルに可能性を感じたものの、すぐに次の疑問が浮かびます。

僕: 「この市場、すでに『Yappli(ヤプリ)』という大きなプレイヤーがいないか?彼らと戦うのは大変じゃない?」

YappliはノーコードAaaSの国内最大手で、上場企業です。個人開発者が真正面から戦える相手ではありません。しかし、Geminiとの対話は、僕に「戦わずして勝つ」ための戦略を明確にしてくれました。

Gemini: 「Yappliと真正面から戦う必要は全くありません。むしろ、Yappliが相手にしない(できない)顧客層が、あなたの戦場です。」

巨人がいるからこそ生まれる、ニッチな市場。僕のビジネスの輪郭がはっきりと見えてきました。

Yappliは競合ではなく、「市場の需要を証明してくれた先行者」。彼らが収穫しない小さな畑を、僕が丁寧に耕す。これが僕の進むべき道だと確信しました。

第4章:神は細部に宿る。実務上の必須知識

ビジネスモデルが見えてきたところで、会話はさらに具体的な実務レベルへと深掘りされていきました。

僕: 「クライアントのアプリをリリースする時、Apple Developer Programのアカウントってどうすればいいんだっけ?」

ここでのGeminiとのやり取りは、このビジネスの根幹を支える、最も重要な知識をもたらしてくれました。

この結論に達したとき、僕はただアプリを作るだけでなく、クライアントのデジタル資産を安全に管理する責任があるのだと痛感しました。

第5章:そして自分自身も。「法人化」という次のステップ

クライアントには「ビジネスとしてアプリをやるなら、法人アカウントが必須です」と求める。この流れで、僕はごく自然に最後の問いにたどり着きました。

僕: 「というか、クライアントにそれを求めるなら、僕自身も法人化した方がいいかもねw」

Gemini: 「はい、まさしくその通りです。あなたのビジネスを安全かつスムーズに進める上で、非常に賢明な戦略です。」

クライアントからの信頼獲得、税金面でのメリット、そして何より「法人」対「法人」というプロフェッショナルな関係性の構築。BtoBのサブスクリプションモデルを展開する上で、僕自身が法人であることは、もはや単なる選択肢ではなく、成功のための必須条件なのだと気づかされました。

まとめ:Geminiとの対話から生まれた、現実的なビジネスプラン

何気ない思いつきから始まったGeminiとの対話は、わずか数時間で、僕の中に一つの現実的なビジネスプランを描き出してくれました。

AIはただ答えをくれるだけの存在ではありません。対話を通じて思考を整理し、新たな視点を与え、アイデアを具体的なアクションプランへと磨き上げてくれる、最高のビジネスパートナーになり得ると実感しました。

もちろん、実行するのは自分自身です。この記事を書き終えた今、僕の目の前には、やるべきことが明確に広がっています。